「勉強したことは確かに分かっているのに、試験になると頭が真っ白になります」| 大学入試を控えた受験生の集中力低下と試験不安
霧の中で道に迷った子
「昨夜まで全部覚えていたはずなのに、試験用紙を受け取った瞬間、頭が真っ白になるんです。分かっているのに、思い出せない。試験が終わってから思い出せるのが、余計に悔しくて。」
これは、高校3年生の受験生ソヨンさん(仮名)が、お母さんと一緒に初めて診察室を訪れたときに話してくれた言葉です。
ソヨンさんは、普通科高校に通う18歳の生徒でした。
クラスの成績はいつも上位で、真面目に勉強するタイプでした。
ところが高3になり、最初の模擬試験を受けてから、不思議なことが起き始めました。
勉強しているときはよく頭に入るのに、いざ試験用紙の前に座ると、頭に霧がかかったような感覚になると言いました。
心臓がどきどきして、手に汗をかき、文字が目に入ってこないと言いました。
最初はコンディションの問題だと思っていましたが、2回目、3回目の試験でも同じことが繰り返されると、不安が大きくなっていきました。
眠ろうと横になると、明日の試験でまた頭が真っ白になるのではないかという恐怖から、夜中の2〜3時まで眠れませんでした。
睡眠不足で昼間はぼんやりし、ぼんやりした状態で勉強するから効率が下がり、効率が下がるからさらに不安になるという悪循環が続きました。
内科で血液検査を受けましたが、特に異常はありませんでした。
「ストレス性なので、休めば良くなりますよ」と言われましたが、大学入試を控えた高3に休むようにという言葉は、現実的ではありませんでした。
私はソヨンさんの症状を、単純な試験の緊張だとは見ませんでした。
身体が送るサインを、より広い視点で読み取る必要がありました。
このような生徒たちを診察室で診るたびに、私は成績よりも先に、この子の身体と心がどれほど疲れているかを最初に考えます。
では、なぜ明らかに知っていることも、試験場では思い出せないのでしょうか?
**曇った窓越しには、景色が見えない**
韓医学では、記憶と思考活動の中心を心(シン)と捉えます。
心は単に心臓という臓器を指すのではなく、精神活動と意識、集中力を主管する機能システムです。
東医宝鑑では、心が清らかで静かであってこそ、物事をはっきりと認識し記憶できると説明しています。
しかし、過度なストレスと緊張、睡眠不足が続くと、この心の機能に濁りが生じ始めます。
韓医学ではこれを、痰飲(たんいん)が心竅(しんきょう)を覆うと表現します。
心竅とは、心が外の世界と交流する通路です。
まるで窓に湿気がついて曇ってしまうと外の景色が見えなくなるように、心竅が塞がると、確かに蓄積されている記憶も取り出せなくなってしまいます。
現代医学でも、慢性ストレスがコルチゾールの分泌を過度に高め、それが海馬の記憶想起機能を妨げることはよく知られています。
韓医学の「痰飲が心竅を覆う」という説明と、現代神経科学の「ストレスホルモンが記憶想起を妨げる」という説明は、異なる言語で同じ現象を指摘しているといえます。
これに、脾胃(ひい)の問題も重なります。
長時間座って勉強し、不規則に食事をとり、遅く寝る生活が繰り返されると、消化機能が弱まります。
韓医学で脾(ひ)は栄養分を作り全身に届ける役割を担っていますが、この機能が低下すると、脳へ向かう清らかな気も不足してきます。
これを心脾両虚(しんひりょうきょ)といいます。
心を司る心と、エネルギーを生み出す脾が、共に弱った状態です。
ラジオに例えるなら、周波数は合っているのにアンテナが弱く、雑音が混じって音がうまく聞こえない状態と同じです。
ソヨンさんに必要だったのは、さらに勉強させることではなく、このアンテナを正し、雑音を取り除くことでした。
**では、曇った窓をどうすれば再び澄み渡らせることができるのか**
東医宝鑑には、このような状態のための処方として聡明湯(そうめいとう)が記されています。
「健忘を治し、長く服用すれば一日に千の言葉を記憶できる」という古い記録は多少誇張した表現ですが、その中に込められた意味は明確です。
聡明湯は、白茯神(はくぶくじん)・遠志(おんじ)・石菖蒲(せきしょうぶ)の三つの生薬で構成されています。
白茯神は不安で驚きやすい心を落ち着かせて安らかにし、石菖蒲は脳への血流を促進して頭を清らかに開き、遠志は心竅に蓄積した老廃物をきれいに取り除く役割を担います。
この三つの生薬が共に作用することで、曇った窓の湿気を拭き取るように、頭の中の霧を晴らすことができます。
ただし、聡明湯を服用するだけで成績が上がるわけではありません。
薬は身体と心のコンディションを引き上げる役割を担うものであり、勉強の代わりはしてくれません。
大切なのは、薬と共に生活習慣も一緒に変えることです。
受験生の脳が本来の機能を発揮するためには、何よりも十分な睡眠が必要です。
深夜まで粘って勉強するよりも、深夜0時前に横になり6時間以上眠ることの方が、記憶の定着にははるかに効果的です。
夜間、脳は昼間に入力された情報を整理・保存する作業を行うからです。
食事も欠かしてはいけません。
朝食を食べなかったり、カップラーメンやパンで済ます食事が繰り返されると、脾胃が弱まり、脳に十分なエネルギーが供給されなくなります。
温かいご飯とスープ、たんぱく質を含んだバランスの取れた食事が、頭を清らかに保つうえで思いのほか大きな影響を与えます。
合間に首と肩をほぐす簡単なストレッチも効果的です。
長時間座り続けると首と肩が凝り固まり、頭への血液循環が悪化して、頭痛や集中力低下につながることがあります。
もし試験不安があまりにも強く日常生活に支障をきたす場合や、ほとんど眠れない日が1週間以上続く場合は、必ず専門医療機関を受診して相談を受けるべきです。
身体が送るサインを無視して、ただ耐え続けるだけではいけません。
霧が晴れた朝、再び鮮明になる道
ソヨンさんは、体質と症状に合わせて聡明湯を基本とした処方を2ヶ月間服用しました。
同時に、深夜0時前の就寝と朝食の摂取、短いストレッチを継続して実践しました。
2ヶ月後、ソヨンさんは試験場で以前ほど心臓がどきどきしなくなったと話してくれました。
頭の中の霧が完全に晴れたわけではありませんが、以前よりずっと鮮明に問題を読めるようになったと言いました。
受験生の身体は、すでに十分に多くのことを抱え込んでいます。
身体が送る疲労と緊張のサインに、耳を傾けてあげてください。
子どもたちの身体は、驚くべき回復力を持っています。
ただ、その回復の鍵を見つけるためには、身体と心を共に見つめる丁寧なアプローチが必要です。
私の役割は、まさにその鍵を一緒に探す伴走者です。
私でなくとも、お子さんの身体全体を丁寧に診てくださる医療従事者に、ぜひ相談してください。
試験の成績よりも先に、お子さんの健康が最優先です。
✍️ 東濟堂韓医院 院長 崔璋赫 監修